大判例

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東京高等裁判所 平成4年(う)630号 判決

被告人 章旭凡

〔抄 録〕

所論は、要するに、(一) 営利誘拐罪とみのしろ金要求罪とは、包括一罪ないし牽連犯の関係にあるものと解すべきであるから、これを併合罪とした原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある、(二) 本件起訴にかかる訴因は、みのしろ金目的略取とみのしろ金要求の一罪であるのに、原判決は、訴因変更の手続きをとることなく、同訴因のうち前者のみのしろ金目的略取の訴因のみを分離して営利誘拐と認定したうえ、みのしろ金要求の訴因との関係を併合罪としている。しかし、原判決の右措置は、処断刑の範囲に関し、被告人に不利益をもたらすものであるから、原裁判所が訴因変更手続きをとることなく、営利誘拐罪の成立を認めた訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令違反がある、というのである。

しかしながら、まず、(一)についてみると、営利目的略取の罪とみのしろ金要求の罪とは併合罪の関係にあると解すべきであるから(最高裁判所昭和五七年一一月二九日決定、刑集三六巻一一号九八八頁参照)、これと同旨の原判決の法令の適用は正当である。

また、(二)についてみると、記録によれば、被告人は、原審第一回判期日における罪状認否の際、みのしろ金目的拐取、拐取者みのしろ金取得等、監禁の各訴因について、自己の関与及び何仁らとの共謀の事実をいずれも否定し、弁護人も同第二回公判期日において、被告人の右罪状認否の趣旨に沿う主張をし、以後主としてこれらの争点を巡って当事者双方の主張・立証が行われていたところ、原裁判所は、第一〇回公判期日において、検察官に対して、「みのしろ金目的略取の訴因中に営利目的略取の訴因が含むと理解してよいか。」との釈明を行い、これに対し、検察官は、「当然含まれていると理解願いたい。」と答え、弁護人も、原裁判所の「その趣旨で防御をしていただくことになるが、それでよろしいか。」との釈明に対して、「結構である。」と述べて、以後第一三回公判期日まで審理が行われて結審するに至っていることが認められる。

したがって、以上のような審理の経過にかんがみれば、当事者双方は、右の争点を十分に意識して攻撃防御を尽くし、裁判所もこのことを念頭において訴訟指揮を行っていたことが明らかであるから、原裁判所が、本件みのしろ金目的拐取の訴因に対して、訴因変更の手続きを経ることなく、被告人の行為を営利目的拐取と認定したからといって、所論のいうように、その訴訟手続に訴因変更手続懈怠の法令違反があるとはいえない。

(小林 宮嶋 中野)

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